らぶ・すいっち



 
「じゅ、順平……先生?」


 絶対にいつもの順平先生じゃない。それだけは確信できる。
 身体中が熱くて、どうにかなってしまいそうだ。

 乾いた口は、パクパクと何か言葉にならない息を吐き出すだけ。
 その唇は今、順平先生の指が触れている。


「須藤さん、スイッチを知っていますか?」

「スイッチ……ですか?」

「ええ。電化製品などにもあるスイッチですが、物事にもスイッチがあるようですね」

「は、はぁ……」


 順平先生は突然何を言い出したのだろう。

 私が聞いているのは、なぜ個別レッスンをしないのに私を居残りさせたかということだ。
 それなのにスイッチがどうのこうのって……順平先生の考えている意図がみえない。

 私の顎を掴んでいる、順平先生の指。そこから彼の熱を感じて胸の鼓動をおさえることは不可能だ。

 心臓が口から飛び出してきてしまいそうなほど、ドキドキしている。
 きっと私の顔は真っ赤になっていることだろう。ううん、きっと身体中が熱を持っているはずだ。

 それを間近で見つめている順平先生には、何もかもがお見通しのようで悔しい。
 なんとかこの状況から抜け出したい一心で、私は首を傾げ、先生に話を促した。


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