らぶ・すいっち




「私はここひと月ほど。色々思い悩みました」

「……何をですか?」


 答えを急かす私に、順平先生は甘い笑みを浮かべた。黙っていなさいということなのだろうか。
 そんな笑みを向けられて、固まらない女がいたらお目にかかりたい。

 カチンと石のように固まった私の頬を、順平先生は左手でソッと撫でた。


「どうして、こんなに感情の起伏があるのだろうか。そもそも、なぜ面倒ごとを自ら進んで引き受けたのか」

「順平先生?」

「でも、先ほどの出来事でようやくわかりました。私もまだまだ青二才だということです」

「先ほどの出来事って……なんですか?」


 順平先生の言っている意味が、よくわからない。

 少しでも理解しようと思いかみ砕こうとするのだけど、まったく見当がつかない。
 それより、早くこの状況から抜け出したいと願うのに。

 やんわりと順平先生に進言してみようか。しかし、その思考は次の瞬間どこかに吹き飛んでしまった。


「君と、元彼の編集者との会話ですよ」

「え?」

「君が彼と親しそうに話しているのをみて、どうやらスイッチが入ってしまったようです」

「スイッチって……何のスイッチですか?」

「それはね……恋のスイッチですよ」


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