らぶ・すいっち





「あのな、京香。そう思っているのはお前だけだぞ?」
「へ?」


 どういうことだと問いただそうとしたのだが、店員の声でかき消された。


「失礼します」


 襖を開け、二人の店員が顔を出す。それと同時においしそうな香りが部屋中に広まった。


「当店で人気がある中華御前でございます」


 前菜の盛り合わせや、炒め物、揚げ物。いろんな料理が少しずつ皿にキレイに盛られている。

 色鮮やかな野菜の色目と香りは、食欲を大いにかき立てる。
 どれから食べようか迷うほど、キレイに彩られた料理たちに私は思わず感嘆を上げてしまった。

 それを後からやってきた店長である宇佐見に聞かれてしまったらしい。


「お気に召していただけたかな? 是非食べてみてください。期待を裏切らないと思いますよ?」


 すごい自信だ。それならと私は箸を手に取り、エビチリに手を付けた。

 炒り卵も入っていて、マイルドな味わいだ。エビはプリリッとしていて美味しいし、エビチリソースも絶品。白米が欲しい、と叫びたいほど。


「このエビチリ、すっごく美味しいです!!」
「おお? 料理が壊滅的にヘタクソな京香にもわかるのか!?」
「料理はヘタクソだけど、舌は鈍感じゃないから!!」


 プクリと頬を膨らまし、そっぽを向く私を見て、合田くんはニヤニヤと笑う。
 全くもって意地悪だ。

 私たちの様子を見ていた宇佐見さんは、肩を震わせクツクツと楽しげに笑い出した。



「仲が良いんだな。合田と須藤さんは付き合っているのか?」
「っ!」


 宇佐見さんは、何を言い出したのか。私は慌てて訂正をしようとしたのに、それを合田くんに止められた。



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