らぶ・すいっち
不器用な君





 合田くんから衝撃の告白をされ、驚きすぎて身体が動かない。

 すぐに逃げ出さなきゃ危ないと頭ではわかっている。だけど、身体は言うことを聞いてはくれない。

 助手席のドアを開け、そのまま外に飛び出せばいい。それだけのことだ。
 それなのに私の身体は金縛りに遭ったように動くことを拒否している。


「やっ! ちょ、ちょっと!!」


 モタモタしていた私の肩を合田くんが抱き寄せてきた。

 顔と顔が触れあってしまうほどの距離。このまま近づいたら、確実に元彼氏と元彼女の関係から別の関係になってしまうだろう。

 もし、私も合田くんと同じで、彼のことがずっと忘れられなかったのなら、このまま流されてしまってもいいかもしれない。
 もしくは、再び恋に落ちていれば、彼の腕の中を心地良いと考えるだろう。

 しかし、今の私には嫌悪しか湧いてこない。

 慌てて離れようとしたのだが、相手は大人の男。本気を出したら、そのまま組ひかれてしまってもおかしくない。
 彼の腕の中でもがき逃げだそうとしたときだった。

 合田くんのスマホから着信を知らせる電子音が響く。

 小さなため息とともに、私を抱きしめていた彼の腕は緩まった。



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