らぶ・すいっち
(今だ!!)
それを好都合だと、慌てて彼の腕の中から逃げる。そしてそのまま外へ出ようとした。
だが、合田くんの手は私の手首を力強く握りしめてきて、その腕を振り払うことができない。
「はい、もしもし」
電話に出た合田くんを睨み付けたが、彼は電話で応対しながらも、視線は鋭く私を見つめている。
少し待て、そう言っているように感じる。だが、私としてはさっさとこの場から立ち去りたい。しかし、それができない状況だ。
それなら今後、自分の身が危機的状況に陥らないよう、強気で彼を睨み付けて隙を与えないようにしなければ。
ギュッと左手だけで自分の身体を抱きしめている間、彼は電話をし続けている。
会話の端々を聞いていると、どうやら仕事関連の話のようだ。
苦虫を噛んだように渋い顔をしたまま合田くんは電話を切り、彼から少しでも離れようとしている私に苦笑した。
「スタッフからだった。記事の差し替えをしろだとよ」
「それならさっさと行った方がいいんじゃない? では、さようなら」
手を離して、と口調を強めたが、なかなか合田くんは私の手首を掴んだまま離そうとしない。
キッと睨み付けると、合田くんは私に顔を近づけてきた。
そのままキスをしてしまいそうなほどの距離に、私はますます危機感を感じた。