らぶ・すいっち
「合田くんの気持ちは嬉しいよ。でもね、うまく気持ちを伝えることができないけど……合田くんとは付き合えない」
合田くんの目を見て、きっぱりと断りを入れる私に、彼は目を閉じて深く息を吐き出した。
「ふーん、それはあの料理教室の先生がいるから?」
「そうじゃない。……と思うけど」
自信はない。だって今だに順平先生からのキスが本気のキスなのか、からかわれただけなのか見分けがついていないのだ。
その案件だけでも唸ってしまいそうなほど難解で私は手一杯なのに、これ以上考えることが増えたりしたらショートしてしまう。
なんだか顔が熱い。突然熱を持ってしまった自分の身体に、ますます訳が分からない。
「フン、なんだよ。自分の気持ちに気がついていないのか?」
「えっと……」
無言で俯く私に、合田くんは今日何度目かの深いため息を零した。
「まあいい。お前の顔に答えが書いてあるからな」
「え?」
どういう意味だろうと顔を上げると、合田くんはハンドルに身体を預け、外の景色に視線を向けた。その横顔は、どこか哀愁を漂わせていて、なぜか私が泣きたくなってしまった。