らぶ・すいっち
「他の男を想っているヤツを彼女にはできないわな。じゃ、あの先生と幸せに」
「結構あっさりね。それに別に先生のことなんて」
言い訳をしようとする私に、合田くんはガシガシと髪が乱れるのも厭わず、かき上げた。
「これぐらい格好つけさせろよ」
「合田くん……」
「ってか、泣いて縋ったら俺とつきあってくれるのか? それなら今、お前を帰さねぇぞ」
冗談交じりのようで、そうじゃない。顔は笑みを浮かべているのに、目は笑っていなくて真剣そのものだ。
その射貫くような視線に、私は胸がツクンと痛んだ。
何も言い出せない私を見て、合田くんはハンドルに頭を預け、俯いた。
それを見て、私は絞り出すように声を発する。
「ごめん」
小さく呟いたその言葉だったが、充分合田くんに伝わったようだ。
彼はフンと鼻で笑ったあと、私の頭に手を伸ばしてくる。
ガシガシと私の頭を撫でる大きな手は、とても優しかった。
「相変わらずバカ正直なヤツめ」
「だって……ゴメンは、ゴメンだよ」
もう一度謝罪の言葉を口にする私を遮るように、合田くんは優しく笑った。