青い記憶
まず、そんな大事な話を森本くんから先に聞くなんて初めてだったから、急いで琴音に報告して、美優を呼んで緊急会議を開いた。
「美優、別れるかもってどういうこと?そんな大事な話、なんで言ってくれなかったの?」
いつもの賑やかしいファストフード店で、私たちの席だけ異様に深刻な空気が流れている。
琴音の問いかけに美優はいつものように明るく笑った。
「啓介のやつ、何て言ってたの?」
「美優と別れるかもしれないって。原因は喧嘩とかじゃないって言ってたけど、途中で先生きたから最後まで聞けなくて。森本くんにしてはまじでけっこう深刻そうな顔してたよ」
私が言うとさらに笑い出す美優。
私と琴音は少し驚いて、顔を見合わせた。
「何言ってんのあいつ。普通に喧嘩してるだけだよ。まぁ、いつもよりちょっと長引いてるし、あいつ頭足りないから大袈裟に考えちゃってんでしょ。本当にただの馬鹿じゃん」
そう言って大笑いする美優に、どうすればいいかわからない私と琴音。
美優の言ってることが本当なら、少し安心だけど、森本くんの深刻そうな顔を思い出すとやっぱり不安はぬぐいきれない。
「あーごめんごめん。本当にただの喧嘩だから、そのうち仲直りするでしょ。まじで心配しないで!ちょっと長引いてるからって何も変わらないよ!私からしたら、別れるとかどっから出た話だよって感じだし」
でも美優も嘘をついてる感じではなさそうだし、やっぱり森本くんが大袈裟になってるだけかな。
琴音も同じことを思ったのか、そんな美優を見て安心したように笑ってる。
この時私は、美優の抱えている本当の気持ちに、美優の明るい笑顔の奥に隠された気持ちに、気付けなかった。