青い記憶
放課後、夏休み前にも集まったファストフード店にまた3人で集まった。
「黙っててごめん。ちゃんとみんなには言うつもりにしてたけど、啓介の方が早かったね。8月入ってすぐくらいに別れました。最初に別れようって話を出したのは私だけど、最終的には2人で納得して出した結論だから」
たんたんと話す美優。私たちはじっと黙って聞く。
「森本くんから理由は美優に聞いてって言われたんだけど…」
「本当に?別に啓介が話してもいいのに」
そう言って笑う美優。
森本くんに『美優の話を聞いてやってほしい』って言われたことは、言わないでおこうと思った。
きっと彼なりの配慮だと思うから。大好きな美優への。
「ちゃんと結論ついた後だから、2人には本当のこと、最初から話すね」
それから美優の口から出てくる言葉には、すごく胸が締め付けられた。
「まず、夏休み前に啓介が亜美に別れるかもしれない、だけど喧嘩じゃないって言ってたじゃん。私はいつも通りの喧嘩だって言ったけど、それは嘘で、啓介が言ってたことが本当。嘘ついてごめん。だけど2人には心配かけたくなかつたから」
そう言って頭を下げる美優。
「そんなことで謝らないで。美優なりに考えてしてたことでしょ」
琴音の優しい笑顔に、美優も笑って「ありがとう」と言った。
琴音の優しさには、私も美優も何度も救われてきた。
「その何日か前に、私から別れようって啓介に言ってたの。私たち高2になる少し前からよく喧嘩するようになってて。このままじゃいけないなってお互いちゃんと話し合ったりしてたんだけど、やっぱり上手くいかない日が続いたの」
「そのとき美優は森本くんのこと、どう思ってたの?好きじゃなくなってた?」
すると、美優は悲しげな笑顔を浮かべ首を横に振った。
「全然、むしろ付き合う前とか付き合ってすぐの頃より大好きだったよ。だけど、その好きな気持ちが大きすぎて、啓介が少しだけでも女の子と喋ってるの見るだけで、私がすぐヤキモチ妬くようになっちゃって、それでたくさん啓介を困らせてた。それが原因で喧嘩の頻度も増えて、こんな自分が自分で嫌になって、啓介にも怒らせてばっかりだし」
美優の表情はずっと悲しげで、消えてしまいそうって表現は、まさに今の美優のことだと思った。
「だから別れようって言った。だけど啓介は別れたくないって言ってくれて、私もまだちゃんと決意できてなかったから、じゃあ、お互いちゃんと考えて、今度また話し合おうってことになったの。それが夏休み前のあの頃」