青い記憶
最近流行ってるイルミネーションを見に行く予定で、それまではいつものショッピングモールで時間を潰すことにした。
「ごめん、ちょっとトイレ行っていい?」
「いいよ!俺、ここで待ってるから」
そう言ってトイレに入って、メイクを直して出てくると、晴くんが誰かと話していた。
…女の子?
晴くんは背を向けているから分からないけど、女の子はすごく笑顔で楽しそうに話している。
茶髪でお洒落で、背は私より高そう。メイクも濃すぎず、雰囲気からして、すごく大人っぽい。
一段と大人っぽく、肩を壁にもたれかけて立っている晴くんに、スッと立ちお洒落で笑顔が素敵な女の子。不覚にも似合ってるなんて思ってしまった自分が情けなくなった。
話はまだ終わらなさそうだし、仕方なく2人のもとに歩み寄り、晴くんの肩を少しつついた。
「あ、亜美、おかえり」
私の方を振り返ってそう言うと、優しく微笑み、もたれかかっていた体制をたてなおす晴くん。
「あー、デート中だったんだよね。話し込みすぎて忘れてた」
そう言って私をチラリと見る女の子。
近くでみると、遠くでみたときよりすごく美人。いい匂いもするし、すごく綺麗でそのオーラに圧倒される。
「彼女さん、亜美ちゃん?付き合ってどのくらい?」
落ち着いた喋り方で、余裕ささえ感じられる。
たまに私に向けられる視線は、どこか冷たくて、少し怖い。
「今月で1年半だよな」
そう言って向けられた晴くんの優しい笑顔にホッとする。
私が黙って頷くと
「ふ〜ん…けっこう長いんだね…」
と私の全身を上から下、下から上へと舐め回すように見てくる。
威圧感しかないその仕草に、怖くて動くことすらできず固まる私。
「あ、せっかくのクリスマスデート邪魔してごめんね。そろそろ行くね」
パッと視線を晴くんに変えると、さっきまでとは違い綺麗な可愛い笑顔で話す女の子。
「じゃあね、晴之」
最後はまるで晴くんしかここにいないかのように、私には1ミリたりとも目を向けず去って行く。