青い記憶
一通り園内を歩くと、私の手を引っ張りぐんぐん人混みから外れていく。
入っていいのかわからない裏道みたいな所も気にせず進んでいく晴くん。
「ねぇ、ちょっと待って、こんなとこ入っていいの?」
「いいからいいから」
心配になって聞くけど、あっけらかんと返してくる。
裏道をどんどん奥まで進み、人がいないどころか、賑わう声すら聞こえなくなった。
心配で堪らなくなってもう一度聞こうとした瞬間、晴くんが立ち止まる。
「ほら、見て」
気がついたら細い裏道はもう抜けていた。
目の前に広がるのは園内を一望できる景色。あまりの綺麗さに言葉を失う。
「どう?ここ」
「…すっごい綺麗。こんな綺麗な景色初めて見た…」
メインの大きなクリスマスツリーを中心に広がる色鮮やかな光の世界。目を奪われる。
「どうしてこんな所知ってるの?」
「だからさっき言ったじゃん、昔来たことあるって」
「……元カノと?」
私が言うと突然吹き出す晴くん。
「もう、なんで笑うの」
あまりに笑うからムッとして晴くんを睨むと、ごめんごめんと謝られた。だけど謝りながらもずっと笑ってるし。だんだん腹が立ってきた。
「も〜、嫌い」
繋いだ手を無理矢理離して晴くんから距離を取る。
こんな絶景を目の前にしても、拗ねてしまう自分に腹が立つ。しかも晴くんが連れてきてくれたのに。
些細なことで妬いちゃうし、晴くんには気を遣わせちゃうし、挙句には笑われたくらいで拗ねる始末。
ほとほと自分に嫌気が差す。
だんだん目の前の景色がぼやけてきた。気づいたらいろんな感情が入り混じって目に涙が溜まっていた。本当、情けないしめんどくさいやつだな私。
晴くんにバレないうちにと、急いで涙を拭うけど、そんなことしちゃ一瞬でバレる。