青い記憶
「それと、昔ここに来たのは家族とだよ。俺まだ小6だったんだけどさ。そん時、8個年上の兄貴にこの秘密の場所教えてもらったんだ。いつかお前にも本気で好きな女が出来たら、ここに連れてきてやれよって」
" 本気で好きな女 "
その言葉に心臓が高鳴る。
それに、元カノなんかじゃなかった。やっぱり私の考えすぎで、今になってあんなに妬いてた自分が恥ずかしくなる。
「それ以来初めてだよ、ここ来たの。兄貴も高2の冬に彼女と来たらしいんだけど、その話がすげぇの。聞きたい?」
晴くんが私の顔を後ろから覗こうとするから、晴くんの顔が真横に接近する。
今にも心臓が飛び出そうだけど、必死に抑えて頷いた。
「あ、だけどその前に…」
そう言って私の前に回してた腕を片方だけ外して自分のポケットを漁りだす晴くん。
「亜美、右手出して」
言われたとおり右手を胸元あたりまで上げる。
すると薬指にはめられる光るもの。
「うそ…」
「亜美にクリスマスプレゼント」
驚いて晴くんの方に体を向けるけど、それと同時にぼやけていく視界。
右手の薬指にはめられたのは、シルバーの指輪。
" H♡A " と掘られている。
「兄貴さ、ここで彼女に言ったんだって。将来一緒になろうなって。たかが17でって普通は本気にしないし、大抵その時限りだったりするじゃん。だけど、兄貴とその彼女、本当に結婚したんだ。もうすぐ子どもも生まれる」
そこまで言うと私の左手をとる晴くん。
「俺が今度ここに指輪はめるまで、ずっと隣で待っててほしい」
晴くんはそう言うと私の左手の薬指を指差す。