青い記憶


「まじでありがとう!課題、帰りに渡すわ!」



「でも字体でバレない?」



「そしたら俺の評価が下がるだけだろ?大丈夫だ、心配すんな。まじでありがとう!さすが親友」





そう言うと、私の頭を軽くくしゃっとして走っていく森本くん。



心配すんなって…私は私の心配をしたんじゃなくて、森本くんの成績の心配をしたんだけど…。


なんかいろいろ心配だよ。



森本くんの頭ぽんぽんとか肩を組むなんて日常茶飯事だから、彼の単なるスキンシップだってことは前からわかってるし慣れっこだけど…



晴くんと美優に誤解を生むようなことだけにはなりたくない。大丈夫だとは思ってるけど。




「亜美、ほんとに森本くんと仲良いよね」




森本くんが走り去ると、前を歩いていたゆめかが私の隣に並んだ。




「まぁ、3年間同じクラスだしね。美優の彼氏だから交流も深いけど」



「いや〜なんか、友達の彼氏だから、みたいな感じじゃなくない?」




…どういうこと?


私が首を傾げると、ゆめかは私との間をつめて声のボリュームを落とした。




「こんなこと亜美に伝えていいのかわかんないんだけどさ…」



「え、なに?そこまで言ったなら教えてよ」



「あくまで噂だからね。本当ではないと思うんだけど、2年の途中で美優と森本くんが一回別れたじゃん?その時期くらい、森本くんが亜美のこと好きだったんじゃないかって…」




…え、森本くんが?



そんなこと、絶対にありえない。あの頃、森本くんずっと美優のことで悩んでたし、美優のことしか頭になかったよね。




「ないない!100%ありえない!」



「まあまあ、噂だから!みんなあることないこと並べたがるんだよ。特に恋愛関係のことはね〜」




こんな100%ありえないこと噂にされちゃ、たまったもんじゃないよ。



もしそんな噂が美優の耳に入って、少しでも不安な気持ちにさせてしまったら…



考えただけでため息が出る。

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