青い記憶
「もう逢沢おいつめるのはやめろ。お前がそんなやつだとは思わなかった。ごめんだけど、もう別れよう」
ただ、今にも溢れ出しそうな涙を堪えることしかできなかった。
圭暉も幸菜のこと庇うんだったら、もう私にはどうにもできないよ。これ以上苦しむのも嫌だ。本当のことを言っても信じてもらえる自信もないし、そんな気力も残ってない。そんなことしたって、また幸菜ともめるだけ。もういいよ。
「なんとか言えよ」
圭暉がため息をつく。幸菜の時と重なった。もう涙を堪えられそうにない。
「わかった」
その一言だけをなんとか絞り出した。
「じゃあ、またな。今までありがとう」
最後だけ圭暉の顔をちゃんと見ようと、立ち上がった圭暉を見上げた。こんな時なのに、切なく柔らかい笑顔だった。やっぱり圭暉は優しいんだね。
幸菜が圭暉になんて伝えたのかはわからないけど、きっと私のこと最低な女だと思ってる。軽蔑してる。だけど最後まで少しだけど優しい笑顔を向けてくれた。
私の話は全く聞かず、幸菜の言うことを全部信じた圭暉も、本当は恨むべき相手なんだろう。
そりゃ、今の私が思い出したら殴りたくなるくらい腹が立つ。
だけど、この時の私は本当に圭暉のことが大好きだったから恨めなかった。