青い記憶
雄ちゃんのココアをもらった日からすぐのことだった。
その日は雄ちゃんは塾に来ない日で、私も個別授業が1コマだけだったからさっさと帰ろうと思って塾をでた。
塾の駐輪場に他校の女の子が3人。他に人もいないから3人の声がよく聞こえて、何気なく聞いてた。
「そういや、竹富さ、そろそろあの他校の女の子と付き合うんじゃないの?」
思わず出しかけた足を止め影に隠れる。竹富って、雄ちゃん?
「あー、なんだっけ、あーちゃんって呼んでる子だよね。竹富、相当気に入ってない?あの子のこと。どうすんの奈帆」
ナホと呼ばれたその子は色白で目がぱっちりで髪も薄い茶色。染めてるんじゃなくてきっと天然の髪質。すっごく可愛いくて見惚れてしまった。
「どうするもこうするも、取り返すしかないでしょ。あんな突然現れた女に雄大とられてたまるかって」
可愛らしい顔に似合わず険しい表情で吐き捨てるように言った。
私は背筋がぞっとした。どこか幸菜と似ているところを感じて、嫌な予感がした。
「だよね〜。奈帆と竹富ほんっとにお似合いだったもん。みんなより戻してほしいって思ってるよ、まじで頑張って」
「雄大取り返すためならなんでもするよ。雄大以上に好きになれる人なんていない」
どこまでも強気だけど、すごく切なそうだった。この子も本当に雄ちゃんのことが好きなんだと思った。
譲りたくない。絶対に譲らない。
だけど、この頃の私にはそんな強気なこと思えなかった。