青い記憶
それから雄ちゃんが塾で話しかけてきても、あの3人の視線が怖くて今までみたいに喋れないどころか、私は雄ちゃんを避けるようになった。
雄ちゃんが私に近づくたび、感じる奈帆ちゃんの視線。
ずっと私が気づかなかっただけで、きっと今までもこんな風に私と雄ちゃんが喋るところを見てたんだ。辛かっただろうな。
だけど、辛い分あの子の私への憎しみはきっと強い。
圭暉の時と同じように、ありもしない嘘を吹き込まれて、大好きな雄ちゃんに嫌われるくらいなら、最初から自分で無かったことにした方が楽だと思った。
そう、私は楽な道を選んだんだよ。
「あーちゃん、今日コンビニは?」
そう言っていつものように私の頭をポンポンとする雄ちゃん。胸が締め付けられる、だけど怖いよ。もう大好きな人に嫌われたくない。怖い思いも苦しい思いもしたくない。
「ごめん、今日は先に帰る」
雄ちゃんと目を合わさず、塾から出て行く。ゆっくりと離れていく雄ちゃんの手の温もり。切ない顔の雄ちゃんが痛いくらい脳裏に浮かんで消えなかった。
だけどギュッと堪えた。
もう苦しい思いをしないため。
それから何日か経ったある日、もう雄ちゃんは私に話しかけてこなくなった。