青い記憶

「え、私が悪いわけ?多野くんのコントロールが悪いんじゃないの?」


私が言い返すと多野くんはまた笑う。


「嘘だよ、ごめんごめん。でもボーっとしてないで授業集中しろよ!」


そう多野くんが言った瞬間、懐かしい感覚に包まれた。


___頭に優しい手の温もり。


一瞬時が止まったみたいだった。




多野くんが、ボールが直撃した私の頭をポンポンとして笑顔で去っていく。


「嘘…。今の何あれ…」


「やばい、私がキュンとした…」


琴音と美優が去って行く多野くんを見ながら私の肩を揺らす。


「なに今の!どういう関係!やばいじゃん!亜美もやっと恋の訪れ?!」


「あれで落ちない女はいないよ〜。もうあれで一気に気になる存在でしょ!多野くんなかなかかっこいいし!」


2人はずっと興奮気味だけど、私は懐かしい感覚と複雑な気持ちで動けなかった。


思い出しちゃいけない。思い出したくない。


あの時私は頭に浮かんだ雄ちゃんの笑顔を消し去ろうと必死だった。

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