青い記憶
多野くんの一件から数週間。5月も下旬に入り、高校生活にもだいぶ慣れてきた。
「今日、森本くんと帰るね〜!」
「おっけー!楽しんでね!」
美優は森本くんと順調に進んで、まだ付き合ってはないけど、何回か一緒に帰るようになった。2人が付き合うのももう秒読みだろう。
「じゃあ私らも帰ろっか」
琴音と2人で帰るのは久しぶりだ。
「ね、どっか寄って帰らない?いろいろ2人で話したいこともあるし!」
「いいよ!行こ行こ!」
琴音の誘いで近くのファストフード店に入った。
「最近原口くんとはどうなの?あんまり会えてなさそうだけど」
「あーね、向こう部活が忙しいからさ。でも絶対疲れてるはずじゃん、だけどちゃんとLINEは返してくれるし、電話もしてくれるし、本当にありがたいよね」
こうやって幸せそうに原口くんの話をする琴音の柔らかい表情が好き。
「でさ、私が今日話したいっていったのは私の話じゃなくて、亜美のこと!」
「え?私なんにも話すことないよ!まだ好きな人もできてないし」
恋愛する気がないからだけど、好きな人も本当にいないし、話すことなんて何もないのに、琴音は何が聞きたいんだろう。