青い記憶
「その頃ね、その子、元彼が他校の女の子と仲が良くて、めっちゃ落ち込んでたんだって。
だからメグともう1人同じ塾に通う友達がよくその子に、奪い返しちゃえって言ってたんだけど、そんな気力も無いくらいその子落ち込んでて。
だけどある日ね、内容はそこまで深く聞いてないんだけど、元彼とその他校の子がとにかくすっごく仲良さそうにしてるの見て、耐えられなくなったその子が奪い返すって初めて自分から言ったらしいの。
だからメグももう1人の友達も嬉しくなって、なんでもするよって言ったの。
それである日、元彼が塾に来てない日に、他校の女の子が塾から出てくるタイミングを狙って、奪い返すっていう会話をわざとその子に聞かせたんだって。
そしたらその他校の子、次の日から元彼の子をあからさまに避けるようになって、何日かしたら元彼の子もその他校の子を諦めたみたいで、それでそのメグの友達は元彼とよりを戻せたって。
メグが楽しそうに話してくれたから私もその時は漫画みたいですごいねとか言ってたんだけど…
メグの言ってたその他校の子の名前が…」
私は途中から琴音の話をずっと下を向いて聞いてた。
きっと顔を上げて、琴音の顔をみたら、堪えてた涙が一気に零れ落ちてしまう。
琴音の話が名前を言う前に途切れたまま。何も言わない琴音。
私は涙が落ちないように必死に力を入れ、笑顔を作って顔を上げた。
「清川亜美、でしょ?」
私の頬に一筋、涙が零れ落ちた。