青い記憶
「おい〜、清川〜。俺まだ何もしてねぇじゃん。ひど〜、わざとだろ?」
「ごめんごめん!わざとじゃないし許して!ね?」
謝ってみるけど、多野くんの意地悪そうな笑顔は消えない。瞬間、
__ピシャッ!
今度は私の腕に青いペンキがべったり。
「これでおあいこな!」
多野くんが満足そうに私を見上げて笑う。その笑顔に胸が疼いた、気がした。
…気のせいだよね。
一瞬頭によぎった考えを振り払うように口を開く。
「も〜最低!これってちゃんと落ちるの?」
「大丈夫大丈夫!落ちるって!じゃ、洗いにいこ!」
そう言うと立ち上がり私の手首を掴んで教室から出ようとする多野くん。
また胸が…
いや、ありないし、まってまってまって、まずこのくらい1人で洗いに行けるから!私が言うと多野くんは
「え、俺につけといて自分の腕はちゃっかり洗いにいくの?」
おっしゃる通りです。多野くんは抵抗しなくなった私を連れて、美優の横を通り過ぎ、みんなの間を抜け、教室から出ていく。
振り返って美優に、ごめん待ってて!と声をかけたけど、美優は呆然と立ったまま時間差で「ごゆっくり〜!」なんて叫んできた。
ごゆっくりじゃないよ、もう。
ていうか、多野くんってこんなに女にベタベタするような人だっけ。
普段はもっと優しくて、女の子にも自分からはあんまり近づかない印象があったんだけど。
まあ、男子なんてみんなそんなもんか。