青い記憶
廊下の端にある水道で、横に並んで黙々と腕を洗う私と多野くん。
洗い出したら急に何も喋らなくなるから困るんだけど。
と、思いつつも私から話しかけることもないから同じように黙って洗う。
水道に来る途中多野くんが「水で洗えばすぐ取れるから!」とか言ってたけど、これがなかなか手強くて綺麗にとれない。
意地になってきて洗い方が雑になってきた頃、多野くんがやっと口を開いた。
「とれた?」
「ううん。全然綺麗に取れないんだけど」
そう言って多野くんの方を見ると交わる視線。思わず目をそらしてしまう。
別に意識してるとかじゃないのに、なんでだろう。これを意識してるって言うの?でもドキっとかしたわけじゃないんだけどな。
「清川洗い方雑だもんな〜」
なんて自分の腕を洗いながら笑う多野くん。
「こまめに洗っても取れないからこうなってるの!」
私がふくれるたのを横目で見てまた笑う多野くん。
そんな多野くんに私は「も〜」とため息をつくけど、この時間が楽しかったりする。