青い記憶
「お、多野〜!」
すると突然、多野くんと同じバスケ部の男の子が多野くんに絡んできた。
違うクラスの人だし知り合いじゃないから、少し多野くんと間を空けて洗い続ける。
「なに?女連れてイチャイチャしてんの?彼女?」
ちょっと嫌な奴。しつこい絡みに多野くんも鬱陶しそうにしてる。
「ちげーよ。真剣に腕洗ってんだからあっちいけよ。水かけんぞ」
多野くんは前を向いたまま体をよじって肩に組まれた腕を払おうとする。
すると私がいるのと反対側で肩を組んでたその男子は腕を組みかえて、多野くんと私の間に入ってきた。
「ねえ、何さん?」
多野くんの肩に腕をくんだまま私の方を向くそいつ。
「清川です」
「清川さんね!てか敬語じゃなくていいのに〜。ねえ、多野と同じクラスでしょ?多野と付き合ってんの?あ、付き合う前?いい感じの時?」
さっきよりしつこくなる絡み。距離もやたら近いし本当は今すぐにでも蹴り一つくらいいれてやりたいけど、一応初対面だし嫌な気持ちが表情が出ないように平常心を保つ。
「お前、ほんっとにしつこいよ。まじで帰れ」
あ、やばい、これは多野くんまじでキレてる。どうしよう。
…と思った瞬間、後方から来たこれまたバスケ部の男の子が
「吉野こんなとこで油売ってんなよ!本当ごめんな」
と言って、吉野という嫌な奴を連れ去っていってくれた。