青い記憶


何度目かの帰り道。いつもと違いずっとどこかソワソワしてる圭暉の様子に、勘付いてはいたけど私は気づいてないフリをしていた。


「おーい、聞いてる?」


いつも通りたわいない話をしていたけど、圭暉の返事は全部上の空。


「あのさ!」


圭暉が目を合わさず私と向かい合う。


「俺と付き合ってください」


いつもの明るい圭暉と違ってすっごく緊張してるのが伝わる。少し恥ずかしそうに私の顔を恐る恐る見る圭暉に胸がギュッとなった。


「はい」


圭暉の緊張が私にもうつって、はいの一言を言うのにすごく恥ずかしかった。
瞬間、圭暉は一気に緊張がとけたのかよっしゃあああああ!!と叫び飛び跳ねた。そんな圭暉が可愛くて可愛くてたまらなかった。


「ありがとう、圭暉」


この時初めて私は圭暉のことを “立川” と呼ばず “圭暉” と呼んだ。圭暉は驚いて固まっていたけど恥ずかしそうに
「よろしくな、亜美」
と言い私の手を握って歩き出したんだ。


今まで人を好きになったことはあるけど、ちゃんと恋愛と言えるものとしてはこれが私の初恋だった。


初めて呼ばれた下の名前も、初めて繋いだ手も、今でも全部覚えている。


青くて、とても甘酸っぱくて、だけどとても無邪気でキラキラしてた。これから起こることなんて、想像もつかなかったよ。



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