青い記憶
始業式を終えた後、ホームルームで自己紹介が始まった。
みんな高2にもなって今さらいいよって文句を言ってたけど、始まったら始まったでおちゃらけた男子なんかはノリノリで自己紹介してたりする。
前の女の子が紹介を終えて、私の番が回ってきた。
自己紹介と言っても、その場で立ち上がって、名前と、1年生の時のクラスと、軽く一言なにか言うだけ。
「清川亜美です。1年5組でした。いろんな人と仲良くしたいです。よろしくお願いします」
当たり障りのない自己紹介をして席につこうとすると…
「え、亜美ちゃんじゃん!亜美ちゃ〜ん」
廊下側の席から聞いたことのある声がする。しかも女子じゃなくて明らか男子の声。後ろを振り向くけど、もちろん森本くんではない。
…誰?
声のする方を見回すと…
「げっ」
思わず声に出してしまった。
「お〜い、げってなんだよ!ひどくない?俺らの仲だろ〜」
まじで言ってんのかふざけて言ってんのかわからない、軽くてチャラくてしつこくて、最強に鬱陶しいこの絡み方は…
「え、覚えてないとかじゃないよね?吉野だよ!吉野!1年の時水道で絡んだじゃ〜ん!」
そう、吉野だ。お前の鬱陶しさは忘れたくても忘れられないんだよ。
吉野のことは完全にスルーして座る。
「えー、亜美ちゃん無視かよ〜。俺けっこう傷つく〜」
勝手に馴れ馴れしく"亜美ちゃん"なんて呼ばないでよ。俺らの仲って何?水道で私が『清川です』て返しただけの会話で仲なんてあるの?
吉野はそこまで顔は悪くないし、黙ってたら一見かっこいいな〜なんて思う女子もいるだろうけど、あのキャラが全部ぶち壊してる。
「何、清川あいつと知り合い?確か、バスケ部だよな?あ、多野繋がり?」
森本くんに聞かれたけど、知らないと答えた。