青い記憶

美優が晴くんのことを"多野"なんて呼び捨てにしたのは初めてだ。


美優の顔を見ると相当怒ってる。



「おう、亜美!ごめんな今行く!」



晴くんは美優が怒ってるのに気づいてないのか、ケロッといつも通りの笑顔を見せる。



「なにあいつ!気づいてないの?なんかめっちゃ腹立つー!彼女の前であんな女に囲まれて何ケロッとしてんのよ!」



美優がカンカンに怒っている横で、私はなにも言えないまま。



美優みたいに怒れない。ただただ衝撃を受けてる。



「亜美…大丈夫?」



美優がさっきまでと違い、心配そうに私の顔を覗き込んできて、やっと正気に戻った。



「ごめん、美優!大丈夫だよ!呼んでくれてありがとね」



笑顔を作るけどきっと上手く笑えてないや。その証拠に美優の眉がどんどん垂れていく。



「ごめんね、つい感情的になって多野くんにあんなに怒っちゃった」



「違うよ!それは全然いいの!」



「本当に?でもちゃんと多野くんには言うんだよ?嫌だって」



私は黙って頷いたけど、こんなの初めてだし、美優みたいにズバズバ言える勇気もないから、どうすればいいかわからない。


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