それは、一度終わった恋[完]

気づいてしまった

「それ天罰だよ。あんたが自然消滅なんて別れ方するから。しかしよく今まで気づかなかったねー」

「帰る時間かぶったことなんて無かったから……」

学食の1番安いカレーライスを食べながら、友人である亜里沙が鼻で笑って言ってのけた。

元彼が隣の部屋に住んでいるなんて、こんなに気まずい状況ありえない。

本当は引っ越したいけれど、私が今のマンションに引っ越してまだ3ヶ月も経っていないし……それはさすがに無理だ。

「ていうかなんか少女漫画みたいな再会の仕方だね、隣人とドキドキ恋愛みたいな」

「現実は気まずい別れ方をした元彼とある意味ドキドキライフだけど大丈夫?」

「……大丈夫だった? 久々に会って」

絶妙な間をあけて、亜里沙が心配そうに問いかけた。

私は彼女の分かりづらい優しさを感じ取り嬉しくなったが、同時にまだ心配をかけさせてしまっていることを申し訳なく思った。

「大丈夫、ありがとう亜里沙」

私が笑顔を見せると、ならいいけど、と呟いて、少しまだ信じ切っていない瞳を伏せた。

私が彼と別れた本当の理由を知っているのは、彼女だけだ。

「あ、いのまりだ。まだちゃんと学校来てたんだ」

私の背中越しにピントを合わせて、亜里沙が目を少し見開いた。

「あの子小説家一本で暮らしていこうとしたらしいけど、もう仕事なくて大分苦しいみたいよ。就活もしてなかったみたいだし」

「そう……なんだ」

「これからどうするんだろうねえ?、とくにコネのある親でもないみたいだし」

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