この声は君への愛を囁くために
高校2年の夏、デビューが決まった。
ライブハウスであたしがスカウトされたのだ。
卒業してもみんなでバンドできるねって、喜んだ。
そんな時だった。
「愛紅、危ない!!」
「えっ…?」
声に振り向くと、目の前にはトラック。
避けられない。
ぎゅっと目を瞑ったら、思い切り身体を押された。
「奈々!!」
光一の叫び声。
「…あ…っ」
奈々に助けられたと理解し、あたしが居たはずの場所を見る。
「…あぁあああ…っ」
世界が黒く染まって、あたしの記憶はそこで止まった。