Destiny
「ん。ありがと」
「いつものな」という一言と共にひらりと手を振り、
店の奥のボックス席に向かう。
だだっ広い、カフェには不釣り合いな宴会向けの席。
「キョウさん!お久しぶりっす!」
「ん。急に悪いな」
「いや、別にいいっすよ!でも…あの仕事だめでした?」
「だめっつか…ナンバーワンにキレられて」
「ああ…なるほど、やっぱりっすか。
でも次は大丈夫っす!完全実力主義のバーっすから!
キョウさん、酒作るの得意でしたよね!」
「嗜む程度。ケンのがうまいよ」
「まったくの初心者でもいいって言ってたんで、
キョウさんなら即戦力として重宝されるっすよ!」
「だといいけど」
昔の後輩、ケンゾー。
当時は高校生だったが、
今は人脈を活かしてこの街で何かの商売をやっているらしい。
「褒められた仕事じゃないっすから!」と、詳細は教えてくれなかった。