Destiny
「すっごいぼーっとしてるよ。大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫…」
「…綺麗な人だね。あんな人がキョウくんの元カノかー」
「うん、でもお似合い」
しゃんとした背筋に、清楚な服装。
カールした髪は色素の薄い茶色で、サイドでまとめられている。
「キョウくーん、嬉しそうね?」
芹がカウンターのキョウに茶々を入れた。
「まあ、昔馴染みに会えるのは嬉しいんで」
「さすがイケメンの元カノは美人だわあ。羨ましい!」
「芹ちゃんもかわいいじゃん。俺そういうはっきりした女の子、好きだよ」
ケンの極上の笑みとリップサービスに、芹の目はいとも簡単にハートになる。
「ごめんね、菜々瀬ちゃん。タイミング悪かったね」
「えっ、いえ!え、どうして…」
「だって菜々瀬ちゃん、キョウのこと好きでしょ」
ぴしり、と固まってしまった。
そして悟った。
これは、牽制なのかもしれないと。