ハンバーガーと私とガールズラブ
「いや、穂波ちゃん、さ、私達、あんまり知らない仲だし、さ」


 私はつい、否定的なことを口に出そうとした。


 お腹空いてるし、空腹だし、空きっ腹だし、放って置いて欲しい。


 私は早く財布を取りに行ってカツ丼を食べたいのだ。


 間に合えばだけど。


 また並んだりしたりしなくちゃいけないし、時間は限られているのだ。


「だ、だめですか?」


 穂波ちゃんは目に涙を一杯に貯めて、私を見上げている。


 うう、なんだこの可愛い生き物は。


 そんな風にお願いされたら、良いよって言ってあげるしかないじゃないか。


「う、うん、イイヨ、ジャア、イッショニタベヨウカ」


 なんだか自分の声が自分の声じゃないみたいに聞こえた。


 なんだか非常に取り返しのつかないことをしている気がする。


「ほ、ほんとですか!?」


 穂波ちゃんの顔色がパッと輝く。


 か、可愛い。


 い、いや、なんと言うかじゃれて来る子犬とか子猫とかを見る感じね。誤解の無いように言っておくけど。


「実は、先輩、私、お弁当作ってきたんです」


 ん?


「先輩の好きなチーズハンバーグとか、たこさんウインナーとか、甘いたまご焼きとか」


 んんん?


 お弁当作ってきたって?


 って言うか、私の好みを把握してるって、すごいな!


 そんなお弁当、早く食べたいよ!
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