ハンバーガーと私とガールズラブ
 荒井は予鈴が鳴っても姿を現さず、さらに言うと本鈴が鳴るギリギリになってから教室に入ってきた。


 その間、エリは私がいくら呼びかけても、口を利いてくれなかった。


 エリ、今日の練習、大丈夫かな。


 そう、私とエリは同じ軽音楽部で、今日は練習日なのだ。


 部員数が多いから、合同練習できる日が限られている。


 今日は月に一回の、視聴覚室の機材で練習が出来る日なのだ。


 と言っても、スタジオを予約して練習すれば良いだけなので、今日がダメなら違う日もありだけれど。


 なんて心配事ばかりを考えていたら、すぐに授業が終わった。


 案の定、エリはさっさと教室を出て行ってしまう。


 と、思ったのもつかの間で他のメンバーからメール着信があった。


『エリ、今日の練習出れないってさ。今日、止めよっか~? なんか気分乗らないし』


 リードギターのアイリだ。


 エリはギターボーカルなので、エリがいないと練習が味気なくなるのは同意である。


『了解』っと私は短くメールを返す。


 エリ、なんで私に直接言わないの?


 私はメールのやり取りをしながら、エリのことを考えて、悲しくなった。


 と、ふと顔を上げると、荒井と目が合った。


 「おい、荒井!」


 語気が荒くなってしまったが、仕方が無い。


 こいつがエリに何かしたに違いない。


 私の友達に何をしたんだ、こいつ。
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