ハンバーガーと私とガールズラブ
「なんだよチビっ子戦車」


 私は一瞬、言葉をなくした。


 そしてこみ上げてくる怒り。


「誰がチビっ子戦車だ!」


 本当にこいつとだけは馬が合わない。


 私は戦車じゃないし。女の子だし。


 170センチ近い身長のこいつから見たら、150センチ半ばくらいしかない私はチビかもしれないが、あんまりだ。


「まぁ、良いや、ちょっとツラ貸せよ」


 私が言おうとした言葉は、先に荒井に言われてしまった。


 荒井にしては、やけに神妙な顔つきだった。


 なんだよ、こいつ。


 着いて来いと言わんばかりに、鞄を持って教室を出て行こうとする。


 私は気に食わないと思いながら、後を追いかけた。


 途中、と言うか廊下を出た瞬間、穂波ちゃんがいるのに気づいた。


 私の顔を見ながら、嬉しさを隠してもいない表情で私に近づいてくる。


「穂波ちゃん、ちょっとごめんね、あいつと用事あるからさ」


 荒井が後ろを振り返って、私と穂波ちゃんを見る。


「悪いな後輩。高田、早く行こうぜ」


荒井はそう言うと、さっさと歩いていってしまう。


 後輩と言い切ったのは、多分、穂波ちゃんの制服のリボンが一年生用の赤色だったからだろう。


 穂波ちゃんが不安そうな顔で私を見ていたが、私はあえて何も言わずに荒井の後を追った。


 何が『あえて』なのかはわからないが、ともかく。
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