ハンバーガーと私とガールズラブ
 私は社まで歩く。


「キスしようとするなんて。未遂でよかったけど、絶対に許さない。荒井の奴、エリも傷つけて、全部滅茶苦茶にして……」


 私は財布を拾うと肩にかけていた鞄に入れた。


 うん。今気づいたけど、鞄の口を閉め忘れてたのか。


 財布以外落としてないだろうな。


 私は周囲を見渡す。


 ……涙を拭こう。


 私は鞄からタオルを取り出して、顔に当てた。


 そして、悲鳴が聞こえてきたのはすぐだった。


 男の声だった。


「……荒井?」


 私は石段の方角に目をやる。


 急に嫌な予感がして、私は石段に向かった。


 なんだか怖い感じがして、走ったりはしなかった。


 恐る恐る歩いた。


 ようやくたどり着いた私は、石段の上から下を見下ろした。


「荒井?」


 荒井が、石段の下で寝そべっていた。


 何、そんなところで寝てるんだ。あのバカは。


 私は石段を降りる。


 一段。また一段。


 降りている途中で、荒井の足が途中から変な方向に曲がっているのに気づいた。


 左手も。


「あ、荒井?」


 私は石段を駆け下りる。
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