ハンバーガーと私とガールズラブ
「先輩……私、1年C組の、夕月、穂波って言います。その、先輩……」


 女の子の大きな目がウルウルしている。


 小さな肩がフルフル。


 そして女の子は懐に手を入れ、爆弾を取り出した。


 いや、本当は爆弾ではないのだけれど、むしろ爆弾の方が数倍マシだったわけで。


「お、お手紙読んでください! 私、せ、先輩の事が好きで……! お、お返事、待ってますから」


 女の子はそれだけを言うと走って行ってしまった。


 一体なんなのだと、その時は思った。


 好きってなんだって、その時は思った。


 いやいや照れるなー。私は人気者だなーなんて、その時は思った。


 ハンバーガーショップでレジに並んだ時は、チーズバーガーにポテト、コーラのセットにしようと思っていた。


 あ、弟の分も買わなくちゃな、なんて、思っていた。


 だが、もちろん、お目当てのセットを買い、家でコーラを飲みながら手渡された手紙を読んだ時は、それどころじゃなかった。


 口から吹き出してしまったコーラは、照り焼きバーガーを頬張っていた弟を直撃し、掃除が大変だった。


 怒った弟をなだめるのにも苦労した。


 手紙が汚れなかったのは奇跡と言えよう。


 って言うか、こんな冴えない私がガールズラブって、そんなのあり?
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