ハンバーガーと私とガールズラブ
 穂波ちゃんの顔が、すぐそこにあった。


「先輩、どうしたんですか……一体、何が?」


 私は悲しすぎてどうにかなってしまったのだろうか。


 嗚咽で、言葉がまともに話せない。


「大丈夫。落ち着いて。ちゃんと聞いてあげるから。先輩。」


「ほ、穂波ちゃん。わ、私ね。」


 一度、声が出せたら、止まらなかった。


「皆のこと、大好きだったの。みんなカッコいいし、一緒に、バンドやれるのが、大好きだったの、なのに、私、く、クビだって。」


 穂波ちゃんは、年下だけど、私の声を全部聞いてくれていた。


「先輩……」


「わ、私、ね。いっぱい練習したんだよ。暇な時とか、スティック持って、膝叩いたりして、演奏する曲のCDだって、何回も聞いたりして。」


「うん。うん」


「でも、他の子が、私のいる場所にいて。」


 もう、ダメだった。


 道の往来だったが、ずっと泣いてしまった。


 鼻水も沢山出て、息も苦しくて、それでも心の中のことを吐き出して。


 だけど、穂波ちゃんはそんな言葉の全部を、さっきと変わらない様子で、受け止めてくれた。


 それから段々落ち着いてきて、私は穂波ちゃんが渡してくれたティッシュで鼻をかんで、涙を拭いた。
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