ハンバーガーと私とガールズラブ
「荒井先輩に取られると思ったんじゃないか?」


 弟が、重々しく言う。


「あんな誰もいない場所に呼び出して話してたら、そう思っても不思議じゃないと思うんだ。夕月が姉ちゃんに手紙を渡したのと、同じ状況じゃん。姉ちゃんのこと好きで、答えももらってなくて、なのに、男に呼び出されて、それで不安になって……」


「や、やめてよ、穂波ちゃんは、そんなこ、と……」


 その時、私の頭に穂波ちゃんの声が甦った。


『エリ先輩とケンカしているのを聞いていて』


 穂波ちゃん、それ、どこで、聞いてたの?


 野次馬の中?


 それとも……まさか、石段の、藪の中で……私が泣いていたのに来なかったのは、それで……


「あ……あ……」


 考え出したらもうダメだった。


「証拠は無いよ」


 荒井が言う。


「俺の気のせいかもしれないし。ほら、足に何か引っかかったって言ったのもさ、米川神社のあそこの昔話。嫉妬して悪いこと考えた男が社の主に足を掴まれて石段から落ちるって奴。思い出して言っただけだから」


 そんな昔話知らない。
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