あまのじゃく
隣のクラス
自転車置き場まで二人で自転車を押して歩いた。

お礼、言わなきゃ。わざわざ先生いる時に来てくれて助けてくれたんだもんね。口を開こうとした。

「あー腹へった。」彼、瀬戸春巳がそう言った。
「え!?」
思わず聞き返す。
「腹へったよー。」
「さっきおにぎり食べたやん!?」
驚いてそう言うと、
「ああ、俺おにぎり毎朝10個は食べるから。」と平然と言ってのけた。
10個ってあんた…。
どうやったら朝からそんなに食べれるの。ハテナがいっぱい。本当に変な人。

自転車置き場に着いた。
この学校では、クラス毎に置き場が分かれているのだ。
私が自転車を停めた。彼が、停めたのは私の隣のクラス。
同級生で隣のクラスなんだと思った。
まぁクラス違うしもう関わることもないよね。

下駄箱にむかって歩き出す。私の後ろを彼が、着いてくる。
靴を履き替え、教室に向かおうとしたら、彼は全然違う方向に歩き出す。
思わず「どこ行くの?」と聞いてしまった。
「あぁ、食堂。腹減ったから腹ごしらえしてから行くわ」

この男はー。遅刻して堂々と食堂って。
でもまだ食堂ってあいてないよね?
「食堂って10時半からじゃないの?」
と聞くと
「うん。10時半から。
でも、食堂のおばあちゃんにゆったらこっそり作ってくれるから。」

まばたきが早くなった。
この男はー。
入学して2週間で生徒指導の先生に覚えられ、対等に渡り歩き、食堂のおばあちゃんに覚えられ、ご飯まで作ってもらう仲なんて。
なんか色んな意味ですごい。純粋に思った。

「じゃあ、またね。高橋千波ちゃん」
え!?なんで名前?
私がビックリした顔をしてると彼が、
「下駄箱に書いてるよ、みんなの名前」
ニヤリと笑った。
「それじゃ」と彼は手を降って歩いていった。

最後に笑った顔は、ニヤリとした笑顔でも意地悪な笑顔でもなく、普通に16歳の男子高校生の笑顔だった。

あ、さっきのお礼、言いそびれた。


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