君が笑ってくれるまで






目の前にいるのは、一ノ宮礼央。

道端でぶつかったとき、すぐに礼央だって気づいた。

礼央は、私のことに気づいてないと思って、逃げるなら今しかないと、動揺しながらも駆け出した。

街にはこんなにも人がいるのにどうしてよりにもよって......

もう二度と会わないと決めたのに。



礼央を見ると、自然と涙がこぼれそうになるのを必死でこらえて、わたしは礼央の言葉を待った。

礼央は、私にかける言葉がみつからないのだろう。

私を見つめたまま、固まっている。


.....どうして追いかけてきたのよ。
私だと気づいても、知らないふりをしてくれていたらよかったのに。


やっと礼央が口を開いた
「凛、元気にしてるのか....?俺がこんなこと聞く権利ないのは、分かってるんだけど.....ずっと気になってた」


礼央は優しい。昔から。
でもね、私は、あなたを許すわけにはいかない。


「元気よ。あなたが気にすることは何もない。もういい?わたし、用があるの。」


わたしは、冷たくてあしらった。
はやく立ち去らないと、涙が出そうだったから。
礼央に背を向けて、歩き出した。


「凛!!まってくれ。」

礼央が叫ぶのを無視して、わたしは歩き続けた。

振り返ることはできない。

私の目は涙であふれていたのだから。




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