君が笑ってくれるまで
「ただいま。」
小さい木造建築の一戸建てが、今の私の家だ。
私には、家族はいない。
一緒に住んでいるのは、私を引き取ってくれた里親だ。
お父さん、お母さん、お兄さん、と他人を呼ぶのは、抵抗があったけれど、10年経った今やっと慣れきた。
「凛〜おかえり! 撮影どうだった?」
「あ〜順調だよ。」
私は今、モデルをしている。
15の時にスカウトされて、それから芸能事務所に入った。
別にモデルに憧れてるわけではなかったが、私は何かに没頭してみたかった。
里親になってくれたこの家族に恩返しするために、仕事をしてお金を返したいという思いもあった。
モデルという仕事は、甘くはなかった。
芸能事務所に入って1年間は、ほとんどモデルらしいことをしていない。
辛く厳しいレッスンに何度も挫折しかけた。でも、辛くて厳しい毎日を送っていれば、過去のことを思い返さなくて済んだ。