Successful Failure -短編集-
「はあ、こりゃ彼氏できないわけだわ」
「何か言った?」
「何にも」
「まあ、二次元の男を追いかけてるような人よりはましかな」
「聞こえてたんじゃない!」
「誰もあんたのことなんて言ってない」
「間接的に言ってるもんでしょ」
「二次元の男のどこがいいわけ?」
「なんていうか、こう、三次元より可愛いじゃん?」
「重症ね。そのまま微分して二次元に行って来れば」
「びぶん?」
「数学の話」
「その、微分ってやつすれば二次元いけるの?」
「理論上はね」
「ってことは、微分すれば二次元からこっちに来ることもできるの?」
「微分したら、あんたの理想の彼氏ってやつがただの線になるけど」
「微分すれば二次元行けるって言ったのあんたでしょ」
「二次元から三次元に来るには、積分しなきゃだめ」
「せきぶん?」
「数学の話」
「難しいこと並べられてもよくわかんない」
「まあ、一生叶わない恋ってことだよ」
「こう見えても、小学校の頃は、モテたんだからね?好きな男の子もいたし」
「根拠がない」
「あんたさ、高校んとき、友達いなかったタイプでしょ?」
「そういうあんたこそ隅で本読んでたタイプでしょ?」
「ふーん。さて、友達の多い私は、帰るとしますか」
そう言って、香恋は席を立つ。
「自分が勝手に友達って思い込んでるだけでしょ」
「何?その言い方」
「別に」
「ま、あんたはこの先、ずっと友達できないだろうけどね」
「友達なんかいらない」
「あっそ」
そう言って香恋は、教室の戸を乱暴に閉めた。
「ふん」