Successful Failure -短編集-



「ねえ、水島君。これ、作ったんだけど、どうかな?」



「花沢(はなざわ)さんが作ったの?うまいね!」



「ほんとー!?じゃあ、じゃあ、今度水島君にも作ってあげるね!」



俺は、チラッと後ろを振り返った。
廊下側の一番後ろの席、吉良明日香だ。



「おーい、キラキラちゃーん。何読んでるのかなー?んー?」



女子三人組の一人、押川(おしかわ)が吉良の読んでいる本を取り上げる。



「えー、何々・・・行政書士になるには・・・ふーん、あんた行政書士なんか目指してんのー?」



「すごーい。国家資格じゃん!」



押川達が騒ぎ立てる。
その騒ぎに俺も、花沢をはじめ、俺の周りにいた女子達も、みんながそこに注目する。



「じゃあ、私もキラキラちゃんに負けないように行政書士目指すから、これ、借りてくねー」



そう言って、押川達は、教室を出て行った。



「相変わらずだねー、キラキラちゃん。何で言い返さないのかな・・・」



花沢がぽつりと言ったその言葉に、俺はため息が出た。



そんな吉良明日香に、キラキラちゃんと俺は親しくならなければいけないのだ。


< 348 / 516 >

この作品をシェア

pagetop