Successful Failure -短編集-
吉良は意表を突かれたような顔をして俺を見た。
その目は透き通っていて、目を合わせると吸い込まれそうだった。
「確かに・・・」
吉良は、俺がしゃべりだしたのと同時に顔を伏せた。
「・・・怖いのはわかるよ。話したこともないような奴から急に屋上に呼び出されるなんて何されるかわからないもんな」
吉良は黙っていた。
俺ももうこれ以上、何も言えなかった。というか、手詰まりだった。
うかつだった。愚かだった。浅はかだった。
相手の気持ちを考えて行動するべきだった。
もっと他のやり方をするべきだった。
ただ、ここで何も言わないとそれこそ変だ。
何か・・・あ、そうかアドレスだ。
それを聞くために呼んだのだった。
当初の目的を忘れるところだった。
「俺、ここに吉良を呼び出したのは、その・・・」
アドレスを・・・
「話してみたかったんだ」