Successful Failure -短編集-
殺した相手は、女だ。
歳は、当時20代後半。
当時19歳だった僕よりもだいぶ年上の人だった。
実際は、殺すつもりはなかった。
しょうがなかったのだ。
19歳の僕は、医大に通う大学生だった。
両親が二人とも医者で、父の病院の跡取りとして、小さい頃から、医者になるように言われて育った。
僕は、それが嫌だった。
初めから選択肢のない、約束された将来。
そして、その道へと進むために、犠牲にする日々。
小学校の頃から塾通いの勉強漬けの毎日で、友達と遊んだり、誰かに恋をすることもなかった。
する暇もなかった。