Successful Failure -短編集-
「お待たせ」
「よし、じゃあ、行こうか」
アパートの下に自転車が一台あった。
「乗っていく?」
と聞かれたが、病み上がりで危ないから、今日は乗らないで、私の横で山縣さんは自転車を押しながら二人で並んで歩いた。
山縣さんに連れられた場所は、団地が立ち並ぶ丘だった。
古墳があって、その周りには遊具がある。
「ここから見える景色を撮っておこうと思ってさ」
そう言って山縣さんはスタンドのようなものに、カメラを取り付け、何やらいじっている。
私は、その後ろ姿を複雑な気持ちで見ていた。
この後ろ姿ももうすぐ見れなくなるんだと思うと。