Successful Failure -短編集-




そんな他愛のない会話だけど、この時間が重要だと改めて気づかされた頃、ふと、山縣さんは言った。



「実は、来週、上京することになった」



覚悟はしていたけど、こんなに早くなるなんて思わなかった。



「俺のじいさんの知り合いの息子が東京でカメラマンやっててさ、それのアシスタントで修行することになったんだよ。じいさんもその人ならいいだろうってことでさ」



「・・・」



「美鈴、俺、頑張るから。何年経つかわからないけど、必ずカメラマンになって帰ってくるよ。だからさ」



そう言って山縣さんは私をギュッと抱き寄せた。



「帰ってきたその時、俺と結婚してくれ!美鈴」



二度目のプロポーズだった。




< 52 / 516 >

この作品をシェア

pagetop