Successful Failure -短編集-
そんな他愛のない会話だけど、この時間が重要だと改めて気づかされた頃、ふと、山縣さんは言った。
「実は、来週、上京することになった」
覚悟はしていたけど、こんなに早くなるなんて思わなかった。
「俺のじいさんの知り合いの息子が東京でカメラマンやっててさ、それのアシスタントで修行することになったんだよ。じいさんもその人ならいいだろうってことでさ」
「・・・」
「美鈴、俺、頑張るから。何年経つかわからないけど、必ずカメラマンになって帰ってくるよ。だからさ」
そう言って山縣さんは私をギュッと抱き寄せた。
「帰ってきたその時、俺と結婚してくれ!美鈴」
二度目のプロポーズだった。