Successful Failure -短編集-




ただ、それならそれでいいんじゃないだろうか。



もし、それで嫌な顔をされても、この電車には乗れなくなるが、それだけの話だ。



ただ、もし、親切心で声をかけるのなら、その人も遅刻しないで済む。
逆に、声をかけなかったら、この人が遅刻をしてしまう可能性だってある。



どっちにしろ、起こす方が無難だと思った俺は、その女性の肩を揺すった。



「あのー、もう御茶ノ水ですよ?」



っと。



すると、女性は、ガバッと起き、俺の顔が目の前にあったことに驚いたのか、一瞬、目を丸くしたが、



「おはよう」



そう言って、電車を降りていった。



俺もその女性の後に電車を降りた。



< 69 / 516 >

この作品をシェア

pagetop