Successful Failure -短編集-
ただ、それならそれでいいんじゃないだろうか。
もし、それで嫌な顔をされても、この電車には乗れなくなるが、それだけの話だ。
ただ、もし、親切心で声をかけるのなら、その人も遅刻しないで済む。
逆に、声をかけなかったら、この人が遅刻をしてしまう可能性だってある。
どっちにしろ、起こす方が無難だと思った俺は、その女性の肩を揺すった。
「あのー、もう御茶ノ水ですよ?」
っと。
すると、女性は、ガバッと起き、俺の顔が目の前にあったことに驚いたのか、一瞬、目を丸くしたが、
「おはよう」
そう言って、電車を降りていった。
俺もその女性の後に電車を降りた。