Successful Failure -短編集-




駅を降りて、橋を渡り、交番の角を右へ曲がる。



その通りにあるコンビニがバイト先だ。



「おはようございますー」



と裏へ入り、着替えて夜勤の人と交代する。
今日の夜勤は、山下さんと店長だった。



「今日、店長、一層機嫌悪くてさ・・・」



山下さんは、俺より2つ上の22歳で、江古田にある大学の4年生だ。
年が近いこともあり、今朝の朝勤で一緒の戸田さんという女子大生の三人でよく飲みに行く。



「なんかやらかしたんですか?」



レジのお金を計算しながら俺は聞いた。



「なんかさー、5000円合わなくて、一晩中、うるさかったんだよねー。トイレ掃除も3回くらいさせられてさー」



夜勤のトイレ掃除は、1回と決まっている。
それを3回もさせられていることを察するに、山下さんは一晩中、とばっちりを受けたらしい。



「多分、夕勤の人が間違えてるんだよー。ほら、昨日の夕勤、折笠さんだったじゃん?」



折笠さんとは、ここのバイト先のおばちゃんで、レジが混むとテンパる癖があり、よく箸を付け忘れたり、お金の計算を間違えたりと、ミスをする。



「まあ、そういうわけで、頑張って」



そう言って山下さんは缶コーヒーを買い、帰っていった。



< 70 / 516 >

この作品をシェア

pagetop