Successful Failure -短編集-
そういう状況か、やっと読めた気がする。
今朝、起こしてあげた女性にお礼としてコーヒーを奢ってもらっている。
それだけ。
アルコールが入っているせいか、どうもそれが当たり前のことに思えた。
そんなわけないのに。
冷静になって考えてみよう。
まず、よく見かけるとしても、話したこともない女性とこうしてお茶するだろうか。
そんなこと、現実世界であり得るのだろうか。
わからない。
わからないが、これは夢ではないようだ。
つねった頬は痛い。
そうこうしているうちに、カフェミストを二つと灰皿を乗せたお盆を持った女性が向かいに座る。
そして、女性は席に着くなり、ブランド物のバッグから細長い箱に入った煙草を一本取り出し、火を点け、吸った。
甘い香りがカフェミストの香りと混ざる。
「ごめんねー。御茶ノ水って煙草吸うところ少ないからさー、仕事終わるまで吸えなかったんだよねー」
そう言って女性は、煙草を一本、俺に差し出した。
「吸ってみる?」