Successful Failure -短編集-




こんな時間にこんな女性とこんなところで二人っきりというものは、落ち着かない。



カフェミストを一口飲んでみる。
美味しい・・・のだろうか?
味を忘れてしまう。
口に入った瞬間、スーっと消えていくような感覚だ。



もう一口飲んでみる。
・・・やっぱりだ。



俺は、緊張している。



喫煙者だったらよかった。
緊張を紛らわすために、煙草を吸う人もいると聞いた。
あ、なるほど。
俺が緊張しているのをリラックスさせようと、あの女性は煙草を勧めてくれたのか。



なんとも雑な親切心だが、彼女にとっては、カフェミストをこの時間におごること、緊張している俺に煙草を勧めることは、今朝の恩返しのつもりなのだろうか。



そうだとしたら、とんだ鶴だ。



おもむろに時計を見た。
時刻は、23:00を回っていた。
もうこれ以上、ここにはいれない。



「あのー・・・」



「ん?何?」



「もうそろそろ電車が・・・」



「んー?」



女性も時計を見る。
高そうな時計だ。
おそらく、ブランド物だろう。



「ホントだ!じゃあ、早速、行きますか!」



そう言って女性は煙草の火を消し、カフェミストを口に含んだ。



やっと解放される。



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