Successful Failure -短編集-
俺たちは、東西線の乗り換えまで一言も会話を交わすことなく、並んで歩いた。
時々、俺が前になったり、エスカレーターで女性が前になったりと、抽象的に見れば、俺たちはとても一緒にお茶したような仲には見えないだろう。
改札まで来て、東西線西船橋行きを待つ。
驚いたことに、女性も同じ電車を待っていた。
毎朝混んでいるとはいえ、女性とは東西線では会ったことはない。
「家、どこなんですか?」
俺は、気になって聞いてみた。
「え?行徳だけど」
行徳といえば、俺の住んでいる葛西から2駅の距離だ。
「けど、一度も東西線では会ったことないですよね?」
と聞こうとした瞬間、アナウンスが流れた。
「ん?何か言った?」
と言うかのように女性は首を傾げたが、俺は、手を横に振って
「何でもないです」
とジェスチャーを送り、二人で電車に乗った。